八尾市立病院

地域連携を推進することで急性期病院としての機能に特化高度な医療を地域住民に届ける
包括的ながん治療を中心に、急性期病院として高度な診療を提供してきた八尾市立病院。昨年4月、病院長に就任した福井先生は地域医療連携室の室長でもある。地域医療連携の話を中心に、同院が注力している取組みを聞いた。
急性期病院の機能に特化
地域の医療機関と連携し必要な人に医療を届ける
八尾市で唯一の公立で、地域医療支援病院でもある八尾市立病院は、地域の診療所では対応しきれない精密な検査や高度な治療の提供、救急の受け入れなど急性期病院としての機能を充実させてきた。超高齢社会の日本において、急性期機能をより強化していくためには、日常的な疾患の診療や日頃の健康管理を担う診療所と役割分担し連携することが必須となる。そこで同院は、昨年3月に地域医療連携室を拡充。同室の室長も務める福井病院長は「紹介や逆紹介の窓口として患者さんの外来受診を円滑にしかかりつけ医を探すお手伝いなどをする地域医療連携センターに、入退院支援センターを併設しました。入院予定の患者さんやご家族に対して、入院後の生活や治療の進め方などを説明するほか、入院中の様々な悩みや相談、退院後に必要なサービスの斡旋や施設の紹介にも対応しています」と話してくれた。
また、同院は地域医療連携の要となる情報共有を円滑にするために『病診薬連携システム』を稼働させている。福井病院長は「当院と地域の医療機関、薬局、介護施設と連携し、各施設のパソコンから当院で診療した患者さんの情報にアクセスできるシステムです。当院の電子カルテを参照できるようなイメージで、令和2年にはアップデートによって精細な検査画像もリアルタイムで確認できるようになりました。検査結果・診療内容・看護記録・薬の処方・患者さんへの説明具合などが詳しく分かるので、各施設で一貫した対応が取れるようになります」と話してくれた。待ち時間の短縮、より正確な診断や治療、薬の重複防止など、患者の身体的・経済的な負担軽減につながるシステムとして、導入施設は増えている。もちろん、情報開示には患者の同意が必須で、個人情報保護のセキュリティ面も万全なので安心だ。

地域屈指のがん治療
高度な診断・治療・ケアの包括的ながん診療を提供
同院の強みは地域屈指のがん診療だ。「当院は外科系の各分野にもエキスパートが揃っているので、高度で安全な手術を提供できます。令和3年には手術支援ロボットを導入したことで、手術はより精確に、患者さんの負担の少ないものになりました。昨年は胃がんと肺がんにも対応し、保険収載されているほぼ全てのがんに対してロボット手術が可能です」と福井病院長。がん治療は手術以外にも放射線治療・化学療法・内視鏡下治療・血管内治療と多岐にわたるが、同院はそれらの治療法を組み合わせることで、患者一人ひとりにとって最適な治療を提供している。さらに『がん診療支援室』では、専門の相談員が患者や家族の相談に応じ、治療費や就労の問題などがん治療に関わるあらゆる不安を解消へと導く。終末期の患者を支える『緩和ケアセンター』も設置しているため、診断・治療・予後のケアまで、包括的ながん治療が可能だ。同院はこうした実績を認められ、厚労省より中河内二次医療圏の地域がん診療連携拠点病院に指定されている。国民の2人に1人ががんに罹患する時代だ。同院が地域に果たす役割は大きい。

内視鏡センターの拡張
内視鏡の進化によって検査と治療の負担が軽減
従来、胃カメラや大腸カメラなど内視鏡による消化器の検査は苦痛を伴う不快なものというイメージだった。しかし、現在は不快感を解消するために鎮静剤を使い「うとうとした状態」で行う検査が一般的になり、希望者が増えている。そのため同院は内視鏡センターを拡張し、受け入れ体制の充実を図った。検査後、鎮静剤の効果が切れるまで安静に過ごす回復用ベッドは6床に増やし、最新のモニタリング機器で安全を管理しているので安心だ。近年は内視鏡も多様な進化を遂げ、小腸や膵臓など精密な検査ができる幅が広がり、胃がんや大腸がんを含め、内視鏡で治療ができる役割も高まっているという。

