医療法人 光誠会 しろばとクリニック

「後悔のない最期」のために緩和ケアホームを運営
在宅医療が困難な際に受け皿となる施設
しろばとクリニックは開院から10年以上、八尾市で先駆的な在宅医療の実践と正しい知識の啓蒙活動を続けてきた。同院の訪問診療は24時間365日体制で、自宅でも心電図やレントゲン、胃ろう交換、胸水や腹水の穿刺、簡単な外科的処置などの医療的ケアに対応。さらに生活全般を支える介護サービスを加えた万全の体制を敷き、多くの方が抱く「自宅で最期を迎えたい」という希望を叶えている。実際に在宅看取りの件数は全国トップクラスの水準。2040年には約41万人が“死に場所難民”になる試算もある超高齢社会の日本で、在宅医療の在り方を示すモデルケースとして注目を集めている。そんな同院が在宅医療をより患者に寄り添ったものにするために運営しているのが「しろばと緩和ケアホーム」だ。「在宅医療の現場を見ていると、患者さん本人が不安になったり、ご家族が疲れてしまったりして、病院での看取りに移行する例も多いんです。それは主治医や環境がガラリと変わることを意味して、大きなストレスの原因になります。その点、当院で受け入れられる施設があれば、患者さんのことを熟知した医師や看護師が引き続き診ることができるので安心です」。栗岡先生は、在宅医療が困難になったとき、緩和ケアに特化した介護施設が受け皿となる形が理想だと語った。

医療と介護の支えがあり自宅のように暮らせる
在宅療養が何らかの理由で困難になったときの選択肢として、よく候補に挙がるのは病院の緩和ケア病棟や介護施設だろう。しかし日本は先進国のなかでも緩和ケアの体制が整っていないため病床数が少なく、予約をしていても空きがないことがある。一方、八尾市は介護施設が比較的多い自治体だが、施設によって注力している部分が異なるため、医療的なケアが充実しているかを見極めることが必要だ。そうした背景の中、新たな選択肢として開設されたのが「しろばと緩和ケアホーム」だ。医師や看護師による24時間365日体制の「医療」と、介護士による手厚い「介護」を同時に受けられる、緩和ケアに特化した介護施設で、最大の特徴はその自由度にある。「在宅療養の延長線上にある施設なので、起床や就寝の時間、食事、飲酒、面会や外出も自由です。自宅の家財道具を持ち込んでもいいですし、愛犬を連れてきて一緒に暮らす方もいらっしゃいました。住み慣れた自宅のように過ごせます」と栗岡先生。同施設は入居一時金も不要で、在宅療養中に急に容態が悪くなった場合の一時的な入居や、ギリギリまで施設で過ごし最期の数日だけ自宅に帰るといった柔軟な使い方もできる。これから求められるのは、こうしたクリニックが運営する緩和ケアに特化した施設だろう。

医療保険や介護保険ではまかなえない部分の充実
同院が考える緩和ケアは、痛みや不安の軽減だけではない。医療保険や介護保険で規定されている最低限のサービスには含まれていないが、自分らしい生活や豊かな生活には必要なサービスを充実させている。「たとえばBBQができる屋上や、居室の大きなテレビ、セラピードッグや熱帯魚の飼育など、施設としてはコストが掛かることです。でも、患者さんの人生の彩りとして必要な部分だと思います。そうした部分を充実させることが大切だと思うんです」。釣りがしたいという患者の希望を叶えるため、スタッフと一緒に外出したという話も施設の雰囲気を表す印象的なエピソードだ。同院は保険外の要望にできるだけ応えるため、一人の患者に対して同じスタッフが長期にわたって寄り添うことで、深い患者理解を促している。
最後に栗岡先生は「まだまだ介護や在宅医療のことを理解している人は少ない。相談に来られた方に説明すると『そんなことまでできるの?』『もっと早く知っていれば…』と驚かれることもあります。自分自身や家族の最期は選択できる時代です。正しい知識を身につけることが、後悔のない最期につながります」と話してくれた。


教えて先生!
在宅介護を考えていますが、仕事をしているので両立できるか不安です
仕事と介護の両立をしている方は多いですが、家族だけでは難しい場合もあります。患者さんやご家族が納得する在宅介護を実現するには、介護制度を理解して、専門の医療者に支えてもらうことが大切です。当クリニックの「がん相談外来」では無料で介護や看取りに関する相談を受け付けます
ココもチェック
在宅医療や看取りの知識を学び自分や家族の「最期」を満足する形で迎えるための一冊

在宅医療の現場で10年以上働いている栗岡先生の著書。在宅医療の基礎から超高齢社会の日本における在宅医療や看取りの現状やあるべき姿まで、実例を交えて書かれている。これから自分や家族の最期をどう迎えるか、検討するすべての人に必携の一冊