地方独立行政法人 市立東大阪医療センター

がん、緊急手術、良性疾患基幹病院としてだけでなく市民病院としての役割も担う
昨年、消化器外科部長として市立東大阪医療センターに赴任した中田先生。消化器センターとして窓口が一本化された同院の消化器疾患治療。そこで精力的に活動する新たな取組みと先生の思いについてうかがった。
消化器がんの診断と治療
各診療科との円滑な連携ロボット手術の増加
市立東大阪医療センターの消化器外科は、中田先生が専門とする下部消化管、上部消化管、肝胆膵のグループに分かれ、それぞれ2〜3人体制。消化器センターとして窓口が一本化されており、内科との連携も円滑で、基本は専門分野の治療を受け持ちながら、症例研究などでも連携をはかっている。「消化器疾患において、内科的治療が必要か、外科的治療が必要か判断が難しいケースもあるかと思いますが、どちらから入ったとしてもセレクションして適切な対応が行えます。また、内視鏡で内科的な治療ができない疾患が見つかった場合でも、すぐに外科が駆けつけて生検を行うなど、患者さんの利便性を高めた機動力を大事にした診療を心がけています」と話す中田先生。消化器外科の治療としては、消化器がんの診断と治療、腹部の緊急疾患、良性疾患への対応の3つがある。「消化器がんの治療に関しては、手術を中心に、外科で対応する化学療法、放射線科と協力する放射線治療を組み合わせた集学的ながん治療を行っています。手術では麻酔科や手術室と、外来化学療法では療法士や看護師、薬剤師との密な連携が不可欠です」。中田先生が専門とされる大腸は、早期から進行がんにまで対応。ロボット手術の増加が特徴で、昨年は腹腔鏡よりロボットによる手術が多かったという。「ロボット手術によって腹腔鏡では出来なかった深い部分まで対応できるようになりました。現在では週2回行っているロボット手術によって、外科医が理想としていた手術が実現できるようになりました。当院では上部と肝胆膵領域についてはまだロボット手術を導入できていませんが、状況が整えばそちらでも広がっていくと考えています」。



緊急疾患と良性疾患への対応
円滑な地域連携により腹部の緊急手術を担う
腹部の緊急疾患に関しては、外傷以外の腸穿孔や虫垂炎、胆嚢炎などの内臓疾患などの緊急手術に対応。救急も可能な限り受け入れる体制を整えている。「胆嚢炎、虫垂炎、腸閉塞、消化管穿孔などが多いのですが、密な連携が取れている開業医とは、メールや電話で直接相談をいただくケースもあります。中河内救命救急センターのマンパワーが足りない場合は、当院から手術に出かけたり、こちらで患者さんを引き受けたりなどの連携を行っています」。コロナの影響から病床的に入院対応ができない状況もあるが、緊急手術に対応できるマンパワーは十分に備わっている。また、以前までは対応できていなかった、痔などの肛門疾患やヘルニアなどの良性疾患にも、中田先生赴任後は積極的に対応している。「当院は基幹病院としてだけでなく、市民病院として良性の疾患にもしっかり対応していく必要があると考えています。ロボット手術で行える鼠径ヘルニアのほか、手術後の腹壁瘢痕ヘルニア、人工肛門のストーマ外来、人工肛門の横にできるヘルニアなどは、日常生活のQOLを低下させる疾患ですので、お困りの方はお気軽にご相談ください」。

緩和ケアと中田先生の思い
2人主治医体制による終末期を意識した治療
麻酔科の経験もあり、前職時には緩和ケアにも携わってきた中田先生。手術で治らない場合は、抗がん剤治療後に病院で看取るという従来までのがん治療の流れに疑問を感じている。「看取る場所が病院しかないという状況は良くありません。選択肢を増やすためには、治療の最初の段階から地域のかかりつけ医と連携を密にした2人主治医体制が理想です。患者さんそれぞれの症状を書き込むノートを共有しながら、日頃の状況をこちらとかかりつけ医ともに把握。治療を行いながら在宅で生活を続けられられる患者さんを少しでも増やしていきたいと思っています」。