地方独立行政法人 市立東大阪医療センター

脳外科手術のスキルに加え顔の見える関係を築き患者と一緒に歩む医療を
24時間365日脳卒中患者の受け入れ体制が整っているなど、いくつかの基準を満たす一次脳卒中センターに認定されている市立東大阪医療センター。脳神経外科部長である藤本先生に、対応範囲や思いなどをうかがった。
脳疾患への対応範囲
脳血管障害だけでなく脳腫瘍や外傷にも対応
日本脳卒中学会が認定する一次脳卒中センターである市立東大阪医療センターでは、藤本先生が部長を務める脳神経外科を中心に脳神経内科と連携して、365日24時間体制で脳卒中の診断治療に対応している。「くも膜下出血や脳内出血、脳梗塞といった脳卒中は、超急性期から急性期までの緊急を要する治療のほか、脳卒中発症の予防を対象とした疾患(未破裂脳動脈瘤や頭蓋内血管、頸動脈狭窄病変など)への治療の両方に対応しています。また、脳神経外科の領域は広いため、脳血管障害だけでなく、脳腫瘍や外傷、顔面痙攣や三叉神経痛などの機能的疾患にも対応していく必要があります」と話す藤本先生。同センターの脳卒中治療に関しては、緊急直達手術やカテーテルを用いた緊急血管内治療に対応。超急性期脳梗塞に対するt-PA静注療法や主幹動脈急性閉塞に対する血栓回収術も速やかに施行可能だ。「脳腫瘍には様々なタイプのものがあり必ずしも手術のみで治療可能なものばかりではありません。機能的予後も考慮した上で、手術摘出範囲を加減し、術後計画的に特殊放射線治療を行ったり、腫瘍によっては手術療法と化学療法、放射線療法を組み合わせた集学的治療を行っています。外傷の中でも特に高エネルギー外傷は、頭部だけでなく全身性に外傷を伴っていることが少なくありません。そのような外傷は連携施設である中河内救命救急センターと万全な協力体制を整備。中河内救命救急センターに搬送された頭部外傷患者に対して、当科が365日24時間体制で手術対応を行っています」。東大阪の中核病院として、診療科はもちろん、関連施設との設備や人的な連携を確立。同センターが中心となる地域の医療体制が、グローバルスタンダードな治療の提供を可能としている。


今後の取り組みについて
地域の開業医や住民と顔の見える関係構築を
「頭の症状が疑われた場合であっても必ずしも脳の疾患という訳ではありません。日本ではそのセレクションを専門診療科を受診する前に行うシステムがほとんどないため、頭の症状が疑われた場合には脳神経外科が診断を担うケースが多くあります。しかし、脳疾患に関しては外科と内科の両方で対応でき、どちらが窓口となったとしても症状によって連携しながら適切な治療を行えることが十分に周知できていません。それは私たちからの情報発信不足が原因だと考えています」。コロナ禍にあって、地域の開業医の先生方や地域住民の皆さんとのコミュニケーション不足を痛感している藤本先生は、顔の見える関係性の構築が必要だと考えている。「本来であれば市民講座などを通して、頭の病気として疑わしい症状の勉強のほか、当院の対応範囲、脳神経内科との役割分担などの情報提供を行う必要があります。どういうものが心配すべき症状で、これなら心配ない。もしくは、他の診療科への受診を考えるべきものなど、それらを知ることによって安心へとつながります。今後は、開業医や住民の方々との信頼関係を築けるような、そういう機会をもっていければと思っています」。

藤本先生の思い
手術件数の多さではなく納得できる治療を提供
市立東大阪医療センターの脳神経外科は、2022年には直達手術234件、血管内手術97件の合計331件の手術を実施。コロナ禍で脳疾患の手術が全国的に減少傾向にある中で数字を伸ばしている。「現在は手術件数が多いことが正義とされる風潮にありますが、医療チームが患者さんと一緒になって納得していただける治療を提供できる病院かどうかが重要です。数ではなくて人なんです。脳の病気はその後の人生だけでなく、ご家族の人生にも大きな影響を与えます。患者さんと一緒に悩み、考え、時間をかけて一番最適な答えを見つけていく手助けをしたいと思っています」。