八尾市立病院
ロボット手術の対応実績 良性疾患の手術との両輪で 地域の消化器外科分野を牽引
上部消化管、下部消化管、肝胆膵領域の悪性腫瘍の手術を中心に対応する八尾市立病院の消化器外科。2019年の赴任から手術件数を大幅に増加させている吉岡部長に、医療への想いと現状についてうかがった。
消化器外科の対応範囲
ロボット手術を用いた悪性腫瘍の手術が特徴
八尾市立病院の消化器外科は、上部消化管、下部消化管、肝胆膵領域と3つの部門に分かれ、手術を中心とする幅広い治療に対応している。その中でも下部消化管部門で部長を務める吉岡先生は、2019年に赴任して以来、手術件数を大幅に増加させるなど、部門の飛躍的な向上に貢献してきた。「当院の消化器外科では、消化管の悪性疾患である食道がん、胃がん、肝胆膵がん、大腸がん、直腸がんを含めて、消化器全般のがん領域に対応した病院であると同時に、良性疾患として胆石症と鼠径ヘルニアの手術にも力を入れて行っています」と話す吉岡先生。専門とされる下部消化管部門では、2021年に導入されたロボット手術による臓器温存を目指した手術のほか、化学療法や放射線治療を組み合わせて行う集学的治療に力を入れている。「大腸がんに携わる3名のドクターはいずれもロボット手術の認定(プロクター)を有しており、非常に高度な手術を提供できる施設だと自負しています。ロボット手術により周りの臓器を可能な限り保存しながら手術が行えるので、従来までは手術の対象とならなかった患者さんにも対応が可能。現在では私たちも100例以上の手術実績があります」。吉岡先生が赴任されて患者数が約1.5倍になっているというが、悪性疾患はもちろん、ヘルニア手術技術研究委員長を務めていることもあり、良性疾患への対応にも積極的だ。「鼠径ヘルニアの手術に長年対応しています。良性疾患の場合、公立病院はハードルが高いと思われている方も多いのですが、専門的に対応していますのでお気軽にご相談ください」。上部消化管と肝胆膵領域においても、上部疾患でロボット手術に対応できる施設は大阪府下でも希少で、消化器外科の分野で地域を牽引する存在となっている。
円滑な地域連携に向けて
地域との連携を深めて公立病院の役割を果たす
「消化器分野の悪性腫瘍に関しては、大きく他の疾患が絡まない限りは当院で対応できています。がんの治療は手術をして終わりではなく、その後の治療が大切になってきますので、出来るだけお住まいから通いやすい施設で完結できるようにしていくことが、市民の健康を守る公立病院の役割だと考えています」。2019年に八尾市立病院に赴任直後にコロナ禍となり、地域の医療機関との密な連携構築が道半ばと話す吉岡先生は、将来的な地域連携への構想をお持ちだ。「大腸がんに関しては医師3人のマンパワーで対応していますが、化学療法や術後のケアも含めると当院だけで全てをまかなうことは難しい状況です。後方支援をしてくれる施設と密接なタッグを組めるようなシステムを構築するためにも、地域の医療機関との顔の見えるコミュニケーション作りは不可欠になります」。一つの症状に対して医師3人が協力しながら対応。麻酔科の医師や看護師も含めてチームで対応する体制が根付いている八尾市立病院だからこそ、働く医師にとっても心地よく、患者さんにとっても安心と信頼を得ることができる場所。そんな同院を中心とした医療連携のシステム化の実現に期待したい。
地域へのメッセージ
トップレベルの手術成績 セカンドオピニオンにも対応
「ロボット手術の導入によって、消化器の悪性腫瘍に対する手術が大きく変わってきました。従来までは腹腔鏡で行っていた手術も現在では2/3がロボット手術で対応しています。上部消化管、下部消化管、肝胆膵領域を含めて、当院の手術成績は大阪府下でも間違いなくトップレベルだと自負しています。また、良性疾患に関しても受診へのハードルは高いかもしれませんが、お気軽にご相談いただけたらと思っています」。悪性疾患と良性疾患の手術を両輪でまわしている八尾市立病院。吉岡先生を中心とする消化器外科の躍進は今後も続いていくに違いない。