地方独立行政法人 市立東大阪医療センター
断らない救急医療を掲げ低侵襲手術を中心に対応患者ごとに最適な治療を模索
2024年1月に、市立東大阪医療センターの心臓血管外科に赴任された丸本部長。2019年の開設以来引き継がれてきた同診療科の低侵襲治療への取組みや先生の医療への思いをうかがった。
心臓血管外科の現状
2019年開設の診療科手術の低侵襲化が進む
市立東大阪医療センターに、集中治療室とハイブリッド手術室が設けられ、心臓血管外科が開設されたのが2019年。その当時から断らない救急医療を掲げ、大動脈疾患や冠動脈疾患、虚血性疾患を中心に全例救急応需の姿勢を続けている。地域からのニーズが高かった心臓血管外科を前任者から受け継いだのが、2024年1月に赴任された丸本部長だ。「現在ではどのような治療でも低侵襲化が言われていますが、カテーテル治療の分野で弁膜症に対して、当院でもTAVI(経カテーテル的大動脈弁置換術)に対応できるようになっています。また、カテーテル治療だけでなく、開胸手術や開心手術においても傷を小さくするなど低侵襲化が進んでいます」。低侵襲化が進むことで、高齢者に対して従来までの治療では諦めざるを得なかった症例であっても治療が行えることに加えて、医療従事者の負担軽減も大きなメリットとなる。「本当の意味での低侵襲化を考えた時に、傷の小ささだけを求めるのではなく、まず病気がしっかりと治ることを大前提にしなければなりませんし、手術の予後やご家族の介護面も含めたトータルでの低侵襲化が重要だと考えています」と丸本部長。同じクオリティで治療結果が出せることを前提とした低侵襲治療を実現するためには、心臓血管外科だけではなく、センター内の連携が不可欠になる。「1月に赴任してきてまだ間もないですが、循環器の先生だけでなく集中治療の先生などハートチーム全体で助け合える環境が整っています。こんなに働きやすいセンターはないなと思いながら日々を過ごしています」。診療科の垣根のないサポート体制が構築されている同センターでは、設備面も含めてチーム一丸となった効果的な手術を提供できる体制となっている。
地域医療連携の重要性
地域医療機関と連携し地域完結型の医療を目指す
市立東大阪医療センターに赴任する以前は、大阪市や大阪府下の病院に勤務。さらにその前は鳥取県の病院で働かれていたという丸本部長。大阪と比べるとアクセスが不便な鳥取県では、病院間の距離が離れていることから、地域完結型の医療の実践が不可欠となる。「鳥取県の田舎での勤務だったこともあ
り、超高齢社会を先取りしたような場所でした。その中でも地域で可能な限り標準的な治療を提供していくことに尽力。その経験を活かしていけたらと思っていますし、東大阪では大阪大学と連携している
ことから、さらに高レベルの医療が提供できるように頑張っていきたいと思っています」。高齢者の方からすると生活エリア内で治療が完結することが望ましく、手術前後の支援を考慮した時に、地域の開業医を含めた医療機関の円滑な連携が重要になってくる。「近隣の開業医の先生方との連携に関して、赴任から間もないこともあり徐々に勉強しながらの部分はありますが、どういった形で連携を取っていくのが一番最適なのか、従来までの連携の仕方はどうなのかを引き継ぎながら、より良い形を模索していけたらと考えています」。
先生の思いとメッセージ
超高齢社会にあって患者にとって最適を考える
「高齢者に対して、術後の合併症や介護レベルを考えた時に、果たして手術をすることが正解なのかは常に考えています。特に緊急手術の場合は、ご家族とコミュニケーションを取る時間も限られて難しいのですが、医師として患者を助けたいという気持ちと、より良い最後の迎え方、ご家族の対応などに気をつけていけたらと思っています」。高齢者に対して、余生をどう過ごしてもらうかは大きなテーマとなる。「かかりつけ医の先生もすごく迷われるケースも多いと思います。その患者や家族にとって何がベストなのかを一緒に考えていけたらと思いますので、気軽にご相談・紹介ください」。