地方独立行政法人 市立東大阪医療センター

Helloご近所ドクター

薬物治療やゲノム医療など患者の症状や生活にあわせた豊富な選択肢を提供

富永先生が赴任されてから、市立東大阪医療センターの乳がん治療は大幅に向上。症例数はもちろん、患者に提供できる治療の選択肢も増えている。乳腺専門医である富永先生に医療の現状と思いについてうかがった。

乳がん治療の現状

病院の総合力によって様々なアプローチが可能に

国指定のがん診療連携拠点病院に認定されたのを機に乳腺外科を標榜。専門医として赴任された富永特命副院長。以前は乳房にしこりがあった際に、婦人科にいくべきか、皮膚科なのかと悩まれていた患者の窓口として機能させ、診断・手術・化学療法すべての指揮を担っている。「乳がんは女性の中で罹患率が一番高いがんで、9人に1人はかかると言われています。しかし、治療法の進歩によって約9割は治癒する病気です。そういう意味でも、私たちは公的病院として治療はもちろん、患者様の就労支援も含めたサポートを行っていく必要があります」と富永先生。乳がんの治療は、ステージのほかサブタイプ分類等によって、手術や化学療法、その組み合わせなど治療方法が異なり、患者の状況に応じてもベストな治療が変わってくる。「ステージ4の場合は転移している状態なので、残念ながら延命や緩和を中心とした治療になります。ステージ3まではサブタイプで適した化学療法もあり、乳がんの75%はホルンモンに依存していることから、ホルモン剤を投与する治療も有効です。ホルモン治療は、脱毛などの副作用が少ないのが特徴です」。手術に関しても3cm以下の乳がんに関しては乳房温存手術が可能で、3cm以上であっても術前化学治療で縮小してから切除。仮に乳房を全切除したとしても、インプラントによって再建することも可能となる。「治療には様々なアプローチがありますが、乳房再建には形成外科が必要で、がん専門看護師や精神科、緩和ケア内科など、病院の総合力が不可欠。また、誤解されている方が多いのが、乳房部分切除で放射線治療をした場合と乳房全切除した場合の再発リスクです。乳房温存手術の方が再発リスクが高いようなイメージを持たれている方もいますが、実際のリスクは全く同じなのです」。

ゲノム医療と治療の選択

遺伝子情報や生活スタイルに適した治療を行う

2020年に遺伝性乳癌卵巣癌(HBOC)診療の一部が保険適応となり、大阪大学から認定遺伝カウンセラーを招くなど、がん治療の更なる可能性に挑んでいる。「乳がんの5~10%は遺伝性で、7mlの血液検査でBRCA1、BRCA2、遺伝子の異常を知る事ができます。乳がん患者様で遺伝子異常が確認されれば、対側乳房にリスク低減目的の予防的乳房全切除を保険で受ける事が可能で、当センターでも行っております。また、将来乳がんの発生する確率が分かれば、乳房全切除によって発癌リスクの低下が期待できます。遺伝子異常の情報をご家族の発癌リスク評価に利用し、ご家族に保険適応はありませんが、検査範囲をしぼったシングルスポット検査はBRCA検査より負担の少ない価格です」。乳がん患者1人を診るのではなく、その家族全員を診るというのが富永先生の考えだ。「70才をこえた方でも毎月お友達と温泉に行くのが楽しみという場合、乳房全切除してしまうとADL(日常生活動作)が低下しますので、乳房温存手術の選択がベストです。また残念ながらステージ4(=転移の有る状態)の乳がん患者様に標準的な化学療法後、がん遺伝子パネル検査で数百の遺伝子を調べ、対応する治療薬を模索する診療が既に行われています。このように様々なニーズが、科学の進歩で対応できる時代になっています」。

乳腺専門医である富永先生をはじめ、がん看護専門看護師、形成外科や緩和ケア内科など、乳がん治療には症状にあわせて多職種のチームワークが不可欠となる

地域へのメッセージ

最新のマンモグラフィーを設置 乳がんの検診率向上を

「薬物治療や遺伝子診断を含め、乳がん治療はある程度のレベルまで来ています。しかし、東大阪市は専門医が限られており、病病連携はもちろん、開業医の先生方と顔の見える医療連携は不可欠です」と富永先生。がん治療で最も重要なのが早期発見であり、地域住民の検診率アップは欠かせない。「やはりマンモグラフィー特有の痛みを懸念される方が多いです。当院のマンモグラフィーは、圧迫板のアクリルが従来のものより柔らかく、痛みが緩和されていますので、2年ごとの検診を継続してください」。富永先生を中心とするチーム医療で、地域の乳がん治療がますます向上するに違いない。

診断から手術、化学療法など全ての指揮を取られる富永先生。東大阪では少ない専門医として、地域の乳がん治療に邁進
圧迫板のアクリルの柔らかさが従来のものとは異なる最新のマンモグラフィー
がんに関する疑問や悩みごとに各専門スタッフが対応するがん相談支援センター

Clinic Data
院名 地方独立行政法人 市立東大阪医療センター
電話番号 06-6781-5101
所在地 大阪府東大阪市西岩田3-4-5
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