八尾市立病院

Helloご近所ドクター

広汎な脳神経疾患に対し予防・診断から終末期まで取組み地域医療に貢献する

悪性脳腫瘍をはじめとした珍しい症例に対応することで地域医療に貢献している八尾市立病院の脳神経外科。部長の森先生に対応疾患の特徴や診療で大切なこと、地域における役割などを聞く中で、同院の強みが見えた。

地域で果たすべき役割

脳神経疾患の診断と脳卒中の予防に尽力

八尾市唯一の公立病院である八尾市立病院。地域に高度医療を提供するという使命のもと、脳神経外科では脳卒中に代表される脳血管障害、脳腫瘍、脊椎脊髄疾患、頭部外傷、パーキンソン病などで知られる機能的疾患に対応している。各疾患の専門性が非常に高いため、脳神経外科のなかでも疾患ごとに細分化された専門性を持つ医師が在籍。また、大阪大学脳神経学科から非常勤の医師を招聘することで、超急性期の脳卒中治療を除く幅広い疾患をカバーしている。脳神経外科部長の森先生は、地域における同院の脳神経外科の役割について「一つは脳神経疾患の診断から治療後まで一貫した医療の提供。この地域の特性として脳神経内科の開業医が多くないため、MRI検査を受ける場所がほとんどありません。そのため高磁場のMRI装置を2台備える当院が、まずは疾患の有無を判断することから始まり、治療後のフォローアップまで担当します」。そしてもう一つの役割は、脳神経疾患のなかでも症例の多い脳卒中の予防だという。「MRIやCTの画像で腫瘍の有無だけを診るのではなく、血管が狭窄してきているなど、将来的な脳卒中の危険性まで解釈します。そのためにも紹介元の先生が普段どんな診療をしているか、患者さんの生活習慣や服薬状況など、あらゆる情報を鑑みて画像を読み解く必要があります。この点は普段から診断や治療をしている脳神経外科医ではないとできない作業ですし、我々に課せられた大きな役割です」と語ってくれた。画像検査の正確な判断や脳卒中の予防には、地域の医療機関とのスムーズな情報共有が欠かせない。同院は、2022年3月下旬に『地域医療連携センター』を機能拡充させるなど、地域との連携強化を図っている。脳神経外科のニーズはより高まる見通しだ。

悪性脳腫瘍の治療

脳腫瘍の特殊性と緩和の重要性

希少な症例である悪性脳腫瘍を専門とし、全国でも貴重な存在である森先生は、その独自性を活かして地域医療に貢献していきたいと語る。「脳腫瘍の特殊性は悪性や良性を問わず、頭蓋内で大きくなること。人間の全ての機能を司る脳が腫瘍によって圧迫されることで全身の様々な部位に障害が出て、最終的には死に至ることも。さらに他臓器と違い全摘出が不可能です。いかに機能を温存しながら治療していくかが脳神経領域の課題です」。脳神経と全身の機能の関連性について専門的な知識や経験を有する森先生は、画像検査や遺伝子検査によるエビデンスに基づき診断。最新鋭の手術用顕微鏡、術中ナビゲーションシステム、神経内視鏡などを駆使して最善の手術や放射線治療を行っている。また、脳腫瘍の治療において重視しているのが緩和や介護の考え方という。「初めは頭痛しかなかった患者さんも、病気が進行するにつれて言語障害や麻痺、視覚や聴覚の障害、嚥下障害などが出てきます。しかし、意識は保たれたまま。一人でできていたことが徐々にできなくなっていくのは、患者さんにとって大きな精神的苦痛です。運動機能のサポートに加えて精神面をどうケアしていくか。これこそ我々が考えるべき緩和です」。

医師・看護師・医療ソーシャルワーカーなどが在籍する『地域医療連携センター』。地域の開業医との窓口となるだけではなく、在宅ケアの調整など患者さんの支援も行う

地域医療連携センター

前向きな治療を目指して様々な苦痛を和らげる

患者さんのADL(日常生活動作)が治療の続行に直接影響する点でも、緩和の重要度は高い。一人ひとりの患者さんに寄り添った診療継続の支援を行うためには多職種・病診間の連携が要となってくる。同院の『緩和ケアセンター』は医師、薬剤師、看護師、公認心理師、管理栄養士など多職種がチームとなって稼働している。「急に病状が悪くなっても迅速に対応してくれるので安心して任せられますし、当院の誇るべき機能だと思います」。その人の人生観や価値観に沿った医療を提供するために、悪性脳腫瘍に限らず、がん診療において初期診断の段階から介入して患者さんをサポートしている。

高磁場のMRI装置を2台設置。従来より精密な画像が撮影できるため診断精度が高くなった
悪性脳腫瘍を専門とする森先生
脳血管疾患のカテーテル検査や治療をするための血管造影撮影室。血管造影撮影装置の刷新で精度が向上している

Clinic Data
院名 八尾市立病院
電話番号 072-922-0881(代表)
所在地 大阪府八尾市龍華町1-3-1
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