地方独立行政法人 市立東大阪医療センター 市川 稔 循環器内科部長

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血管内治療に取組みながら
地域のかかりつけ医と連携し
早期発見・治療に努める
東大阪市には循環器疾患に特化した病院が少ない。そうした現状を踏まえ、循環器疾患に対応する態勢づくりを進める市立東大阪医療センターの取組みについて、市川循環器内科部長にお話をうかがった。
地方独立行政法人 市立東大阪医療センター
市川 稔 循環器内科部長
治療の内容
カテーテルを用いた
低侵襲な血管内治療
高齢化が進むにつれて心筋梗塞などの循環器疾患が増加しているなか、同院では24時間態勢で緊急心臓カテーテル検査を行っている。「カテーテル検査は手首や肘からカテーテルと呼ばれる細い管を入れる検査です。心臓近くまで送り込んで造影剤を注入することで血管の様子を映し出すことができ、それで血管が狭くなっている箇所を調べます。所要時間は約20分~30分。血管には神経がないので、基本的に麻酔の時以外は痛みはありません。当院では手首から挿入することが多いのと、局所麻酔のみになるので、手からの検査の場合は検査の後も動いていただけますし、翌日には退院できます」。CTやMRI、運動負荷検査などで狭心症が疑われる場合、その原因箇所を調べるための検査だ。検査で血管の狭い所や閉塞している所があれば、カテーテルを利用して、狭くなった箇所をバルーンで広げる風船治療や、風船治療をした箇所が再狭窄しないようステントと呼ばれる金網で補強する治療にも応用される。さらに同院では血管内イメージングという検査も行っている。「血管内イメージングは、カテーテル検査では確認できない血管内の様子や硬さまでわかる検査です。血管内から超音波を当てて血管の断層を画像化できる血管内超音波、血管内の異常な組織の性状などもわかる光干渉断層法、血管内の色調などから状態を判断できる血管内視鏡の3種類があります」。大阪府下でも行える施設は少ないが、同院では積極的に行っている。また不整脈の治療としてペースメーカー植え込み術のほか、カテーテルアブレーション治療も行っている。脳梗塞の原因となる血栓を作る不整脈に対し、不整脈の原因である箇所を焼灼する治療で、同院では2017年より実施し積極的に取組んでいる。
血管内部からの治療を可能とするカテーテル手術の様子。同院では24時間態勢で緊急心臓カテーテル検査を行っている
光干渉断層法による血管内の画像
地域との連携
診療科の壁をこえた
かかりつけ医との連携が重要
心筋梗塞、不整脈など、循環器疾患には様々な種類があり、それらの疾患により血液を送るポンプ機能が低下する。それが心不全だ。心疾患の危険因子として挙げられるのが高血圧、脂質異常症、糖尿病、喫煙。もし糖尿病が循環器疾患に関連している場合は、循環器内科による治療だけでなく、他の診療科との連携も必要になる。それは同院内だけではなく、地域の診療所との連携もその範疇だ。またがん患者は足に血栓ができやすいと言われていたり、骨折して整形外科でリハビリをしていたら血栓ができていたという例がある。一見、無関係なところから循環器疾患に至る可能性があるため、様々な診療科との情報共有が大切だ。「地域のかかりつけの先生方にも循環器疾患について知っていただき、普段診ている患者さんの異変に気付いたらご連絡いただける関係を築きたいと思っています。かかりつけ医の先生方からは、こんなことで患者さんを送っていいのか、こんなことを聞いてもいいのかと遠慮のお声もいただきます。そのため、講演会や研修会を開催し、直接お話しすることで情報の共有や信頼関係の構築に努めています」。そうした取組みの甲斐あって紹介患者は増加しているそう。地域ぐるみで循環器疾患に対する防壁を築きつつあるようだ。
血管が狭くなっている箇所をバルーンで広げ、金網で補強するステント
カテーテル治療の専門医である市川先生のほかカテーテルアブレーションを行える医師も在籍し、10名態勢で治療にあたる循環器内科チーム