地方独立行政法人 市立東大阪医療センター 隅先生

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脳卒中の救急対応
認知症、神経難病など
多岐にわたる診療を行う
市立東大阪医療センターは、東大阪市では神経内科の常勤医を擁する数少ない病院。脳卒中、神経難病、認知症など多岐にわたる神経内科の取組みについて、2018年4月に部長として赴任された隅先生にお話しをうかがった。
地方独立行政法人 市立東大阪医療センター
隅 寿恵 神経内科部長
脳卒中24時間ホットライン
小さな違和感も重病の可能性
遠慮せず救急に連絡を
2016年より、市立東大阪医療センターでは脳神経外科と神経内科の共同による「脳卒中ホットライン」を実施。救急隊からのコールを医師が直接受け取り、時間が勝負の脳梗塞や脳出血急性期に対して素早い診療を行っている。ホットラインそのものの機能は順調だが、隅先生は憂慮されていることがあるそうだ。「脳卒中というと、急に椅子から崩れ落ちたり立ち上がった途端に半身が痺れるといった強い症状が突然現れる突発完成型のイメージが強いと思いますが、必ずしもそれだけではありません。朝起きたら感覚に違和感がある、歩きにくい、少し手が使いにくいといった軽度の症状から徐々に進行していくタイプもあります。極端な例だと3日ほど軽い症状が持続することもあり、数日間に渡って徐々に症状が重くなって最終的に救急車で運ばれてくる。完全に動かなくなってからの治療だと重篤な後遺症が残ってしまう確率が高くなるので、もし発症した3日前に救急車を呼んでいたならと悔やまれることも少なくありません」。このような脳梗塞のタイプはBADと呼ばれアジア人、特に日本人に多いとされている。またその後の進行度合いは医師にも判別がつきにくいため、なおさら早期の治療を要する。「高齢者、糖尿病や高血圧、高脂血症、不整脈のある方は特にご注意ください。体の左右の感覚ズレや違和感を感じたら脳卒中の疑いありです。そのうち良くなると思って放置してはいけません。救急車の適切な利用を気にするあまり、電話を躊躇される方も多いと思いますが、一刻を争う疾患ですので異常を感じたら遠慮せず救急にご連絡ください」。いかに小さなものでも、予兆を感じたらすぐ救急車。この意識を持つことで、生命や生活を守れる確率が随分と上がるだろう。
神経内科医師7名、脳外科医師5名で当直を輪番し、24時間隙間なくコールを受ける「脳卒中ホットライン」
精神科医による認知症治療。臨床心理士も在籍し心理検査などを行っている
認知症患者の増加
軽度の認知障害を洗い出し
早期から治療に取組む
現在日本では認知症患者が600万人。30年後には1000万人まで増加すると言われている。同センターにも地域の診療所から認知症の疑いのある患者に関しての問い合わせが増えているそうだ。それを受けて昨年に精神科の医師が赴任し、春からは「物忘れ外来」を開設。認知症の診療体制強化に力を注いでいる。神経内科としては、精神科での治療を要する重度の患者ではなく、軽度認知障害といった認知症一歩手前までの軽症患者の治療を担う。「認知機能障害は甲状腺機能低下症、抑うつ状態、ビタミン欠乏症、正常圧水頭症、脳血管障害などが原因となっているケースもあるので、その判別のためにまずは血液と画像による検査を行います。そのうえでアルツハイマー型認知症などと診断された方に検査結果、現在の状態、生活の注意点、投薬などについて説明。普段から関わっている医師に診てもらう方が患者さんも安心されると思うので、以降はかかりつけ医にバトンタッチし必要に応じてこちらでの診療も行います。認知症という診断は受け入れ難いかもしれません。しかし今はいい薬が処方されているので、早期から治療を開始すればそれだけ予後が良くなります。早期発見と治療で可能な限り長く穏やかな生活を送りましょう」。
難病支援事業の研修会を開催。著名な医師を招いて講演も開いた
神経難病患者宅への同行訪問は年間約80件ほどの実績。患者と医療に携わる側双方の安心につながることを実感でき、今後もできる限り続けたいとのこと