地方独立行政法人 市立東大阪医療センター 山内 孝 心臓血管外科部長

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循環器内科との連携により
東大阪市内で循環器疾患の
治療完結を目指す
2019年、市立東大阪医療センターに心臓血管外科が設けられた。東大阪市では数少ない循環器の外科・内科が揃う病院として循環器内科と連携しながら手術に取組む同科について、山内心臓血管外科部長にお話をうかがった。

地方独立行政法人 市立東大阪医療センター

山内 孝 心臓血管外科部長

心臓手術の内容

開胸・腹手術を中心に
カテーテル治療にも対応

 心臓血管外科が手術に当たる疾患は大きく分けて3つある。「1つは冠動脈疾患。心筋梗塞や狭心症といった心臓の周囲をめぐる血管の内腔が狭くなる疾患です。対象となるのは、循環器内科によるカテーテル治療が適用できない重症患者。冠動脈はボールペンの先ほどの太さしかないので、血管内のゴミを取り除いてもうまく血液が流れないこともあります。その場合は冠動脈バイパス手術という手術を行い、自家血管を用いて患部を迂回するように血管を繋げ、正常に血液が循環するようにします。2つめは弁膜症。高齢化にともない増加している疾患で、血流の方向を制御する心臓内の弁が加齢とともに傷み、開閉しにくくなる疾患です。治療方法は弁を修復する心臓弁形成術という方法と、弁を人工物に置き換える心臓弁置換術という2種類があります。4つの弁のうちどの箇所が傷んでいるか、またその傷み具合で修復するか置き換えるかを判断します。3つめの疾患は大動脈疾患。大動脈は胸部、腹部、腸骨など身体の各所にあります。そのいずれかが動脈硬化等が原因で拡大し瘤状になったものを大動脈瘤といい、破裂の危険性が考えられます。また加齢による劣化で血管の内膜に亀裂が入り裂ける疾患を大動脈解離といい、大動脈疾患はこの2つに分けられます。破裂してしまうと出血性ショックで、また裂けた状態でも脳卒中や心臓発作を起こし死亡する可能性があるので、それ以前に手術しなければなりません。手術の方法は、いずれも人工血管に置換する方法か、血管内から患部にステントグラフトを送り込み、血液の流路を確保する方法をとります」。同院の循環器内科との連携により、手術の必要のある患者をピックアップして治療に当たっている。


手術台と血管X線撮影装置を組み合わせたハイブリッド手術室。開胸・腹による手術とカテーテル治療、それぞれのメリットを生かした手術により、患者の負担を抑えながら根治性の高い治療が可能となる

東大阪市民のために

24時間365日受け入れ
市内で完結できる態勢を目指す

 こうした手術が必要になる患者は、人口2000人に対し年間1人程度の割合だという。東大阪の人口はおよそ50万人。年間250名は発生している計算になる。しかし同院に山内先生らが赴任する以前、東大阪でこうした手術を受けた患者は年間100名ほど。あとの150名は市外、主に大阪市などに運ばれている。「大阪市が隣にあるというのはある意味便利なことかもしれません。しかし心臓手術は急を要するもの。また高齢の患者さんが多いので、その後の経過観察などを考慮するとご自宅から近い病院で手術を受けて頂く方が患者さんのメリットも大きいものかもしれません。当院は東大阪の市民病院ですので、わざわざ市外に行かなくとも東大阪市内で循環器疾患の治療を完結できる態勢を築くのが役割だと思っています」。心臓血管外科と循環器内科が揃っている病院は、東大阪市では数が少ない。この現状を打開し救急病院としての役割を全うするため、心臓血管外科チームは24時間365日態勢で手術に対応し、急患が運び込まれた際はオンコールで駆けつける。また開胸・開腹手術とカテーテル治療、どちらにも対応したハイブリッド手術室も新設した。市民を守る病院として、救急要請に常時対応する態勢づくりが進んでいる。

心臓手術の後は1日ほどICU(集中治療室)に入り、術後の管理が行われる

山内先生が中心となり心臓手術を手がける心臓血管外科チーム。山内先生は20年以上にわたって手術に携わってきた、経験豊富な専門医だ

手術に携わる医師として

患者の決断に応えるため
技術の研鑽に努める

肉親が手術を受けなければならなくなったとき執刀してもらいたいと思える医師であるかどうかを自身に問いかけ、常に技術を磨いている山内先生。とはいえ心臓手術はどうしてもリスクを避けられないものであり、数%のリスクで死亡や脳梗塞などの後遺症が残るとされている。「心臓手術は患者さんの人生にとって一番大きな賭けとも言えるもの。そのため必ずしも手術を勧めず、ご家族ともご相談いただくようお願いしています。そのうえで決断し手術を望まれる患者さんに喜んでいただくために、常に手術のことを考えトレーニングを重ねています」と話し、患者の信頼に応えられるよう努めている。

hospital data

地方独立行政法人 市立東大阪医療センター
TEL:06-6781-5101
東大阪市西岩田3-4-5


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