地方独立行政法人 市立東大阪医療センター 古川 直人 産婦人科部長

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新部長の着任で
増加する腹腔鏡手術と
頼れる周産期センター
2020年7月に産婦人科部長に着任された古川先生。婦人科疾患を専門とし、腹腔鏡による手術を多く手がけてこられた医師だ。そのスキルを活かし、婦人科疾患の手術件数増加を図る古川先生に、お話をうかがった。

地方独立行政法人 市立東大阪医療センター

古川 直人 産婦人科部長

低侵襲な腹腔鏡手術

手術のバリエーションを増やし
患者のニーズに応える

奈良県の病院から市立東大阪医療センターに着任された古川先生。「奈良県の人口は全体で約130万人ですが、東大阪市は約50万人。かなり大きな都市ですが、当院の産婦人科は腹腔鏡による手術件数が少なかったようです。手術の選択肢を広げ、より患者さんのご希望に沿った手術ができるよう、腹腔鏡手術の増加に努めたいと思っています」。悪性疾患については開腹がメインになるが、一部は腹腔鏡でも保険適用になっている。良性疾患についてはほとんど腹腔鏡手術が可能であり、できるだけ低侵襲で負担の少ない手術を選択したいというニーズに幅広く応えられるだろう。また2021年4月に赴任される医師も腹腔鏡手術を扱い、さらに多くのニーズに対応できる態勢が整う。「もともと一般のクリニックから紹介されて来られた妊婦さんの帝王切開率が高く、手術件数の約半分を占めていましたが、今後悪性腫瘍等の手術を進めていくにあたり、さらに手術枠を拡大したいと思っています。手術支援ロボット・ダヴィンチが既に導入されていることから、婦人科疾患のロボット手術についても準備を進めています。悪性腫瘍は手術だけでなく抗がん剤治療、放射線治療と並行して行う集学的治療が主流です。すでに診療科や部門の壁なく横断的な連携で治療を提供する態勢はできていますが、婦人科疾患についてもよりきめ細かく態勢を組み立てていきたいと考えています」。また今までは非常勤医が担当していた月1回の遺伝カウンセリンが常時可能に。「ある遺伝子異常がある方が、ない方と比べて高確率でがんになる遺伝性乳がん卵巣がん症候群に対して、日本ではまだ浸透していませんが、予防的に切除する治療も選択できます」。古川先生の着任により、様々な治療の選択肢が広がったようだ。

低侵襲の負担が少ない腹腔鏡手術の実施や、女性の体と心のヘルスケアに注目している古川先生。患者さんの満足いく医療を提供できるよう尽力している

集学的治療の一角、抗がん剤治療を行う外来化学療法室

分娩室の様子

連携のとれた周産期医療

OGCSに加盟し
ハイリスク妊産婦を応需

周産期医療センターを開設していることから、リスクのある妊産婦が運ばれてくるケースも多い。「血圧が高い、内科的な合併症があるなどのケースを多く診ています。合併症の管理は他の診療科との連携が必須ですので、そこは総合病院の強みですね」。産科救急患者を受け入れるOGCS(産婦人科診療相互援助システム)に東大阪市で唯一加盟している病院として、クリニックとも密な連携を構築。普段の通院や検診は最寄りのクリニックで、お産はこちらで行うセミオープンシステムも導入しているので、安心なお産を迎えられるだろう。出産直後のスクリーニング検査に、拡大新生児マス・スクリーニング検査をオプションで付加できるようにもなった。「免疫が弱く、ただの風邪でも重症化してしまう重症複合免疫不全症を見つけるための検査。5万人に1人ぐらいの稀な代謝疾患ですが、少しでも新生児のリスクを下げようという取組みです」。コロナ禍の今、免疫力が低下する妊産婦から不安の声も聞こえる。「今のところ妊産婦の重症化リスクが高いという報告はありません。とはいえ妊産婦はインフルエンザで重症化する可能性があるなど感染症には気を付けたいので、3密を避け、推奨されている感染予防をしっかり守っていただくことが大切です」。

婦人科疾患、周産期ともに対応できる医師が揃っているとのこと。漢方薬に精通している医師もおり、更年期障害や不定愁訴に対して積極的に処方している

古川先生の想い

体も心も健康になれるよう
女性のヘルスケアに携わる

周産期に関しては母子の健康を第一に取組むという古川先生。がんに対しては「特に婦人科のがんは卵巣を取ってしまうと体のバランスが崩れ、若い方でも更年期のような状態になります。そのため、がん治療はがんそのものだけでなく、体と心のヘルスケアにも注目して治療にあたっています」と治療後のサポートまで見据えている。産婦人科は高齢者なら骨粗しょう症、若い方は生理不順など、年齢を問わず女性の悩み全般を扱い、それぞれの状況や立場に応じた治療が必要だ。古川先生は患者と相談し、希望が叶い満足してもらえる治療を提供したいという思いで、毎日の診療に携わっている。

hospital data

地方独立行政法人 市立東大阪医療センター
TEL:06-6781-5101
東大阪市西岩田3-4-5


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