八尾市立病院 馬場先生

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受け入れ件数が大幅増 断らない救急を目指し 地域の救急を支えられる存在に
八尾市の公立病院として、市民の健康を担う八尾市立病院の救急現場が、大きく変わろうとしている。昨年4月に赴任し救急診療科部長となった馬場先生は、従来までと異なる理念を掲げ『断らない救急』を目指す。
八尾市立病院
馬場 貴仁 救急診療科部長
八尾市立病院の救急の現状
もたらした変化によって 救急受け入れ数が大幅増
八尾市立病院の救急受け入れ数が、この1年で大きく増加している。そのきっかけとなったのは、昨年4月に救急診療科部長として同院に赴任された馬場先生の存在が大きい。厚生会第一病院で、救急は断らないことをこだわりとして10年間勤務。救急の受け入れ数増加に多大な貢献をもたらし、目標を達成したこともあって次のステップへ移行。八尾市立病院からの誘いを受け現職に就いた。「当初は1年間くらい医療の現場から離れようと考えていたんです。しかし、研修医の育成を含めてやってみないかとの言葉をいただき、救急で大事なことは院内の交通整理と後輩の育成ということを先輩から助言されて決意しました。やるからには、八尾市立病院の救急を変えてやろうと思い、断らない救急を目指して精力的に取組んでいます」。前職は組織が小さかったこともあり、時には強引な手法を用いてスタッフ全員の意識を同じ方向にしてきたが、約50人が関わる現状では一筋縄ではいかない。「断らない救急を院内全体に浸透させるためには、意識の統一はもちろんシステムを構築する必要があります。年末年始は忙しいこともあって7割くらいしか救急を受け入れることが出来ていないのが現状です。私の思いが100%だとしたら、周りの人間には10%、さらにその先になったら1%しか伝わらないものです。まだまだ目標までは程遠いと実感しています」と馬場先生。個人の思いや行動だけでは目標を達成することは難しく、病院全体のシステムとして落とし込んでいくことが必要となる。その第一歩として、研修医を対象に症例検討会などのカンファレンスを週1回開催。特徴的な症例を提示するなどの工夫で、スタッフの意識改革をはかっている。
ハードな業務内容が続く救急医療では、医師が楽しく仕事する姿勢が患者さんにも伝わるという馬場先生
馬場ちゃんなどのニックネームで呼ばれ、スタッフとのコミュニケーションも円滑
救急対応への変化
心肺停止の受け入れなど
救急隊から求められる病院へ
「私が救急診療科に赴任して決めたことがひとつだけあります。それは、心肺停止の患者さんの救急要請に対しては、どんなことがあっても断らないということです。従来までは、ICUに確認して、循環器内科の先生に確認、カテーテル室の空き状況を確認後に救急担当医が忙しいからという理由で断るというケースが多々ありました。その5分間、救急隊は胸骨圧迫をしながらペンディングになっている。なぜそういうことを考えないのか。もちろん、しっかりとした受け入れ態勢を整えてからというプロセスも大事ですが、救急の現場ではそのプロセス自体が患者が生きるチャンスを奪ってしまうこともあるのです」。救急には技術が必要という意見もあるが、意識や気持ちの問題が大きいというのが馬場先生の考えだ。前職ではライバル病院として八尾市立病院の救急医療について十分熟知していた馬場先生。長く待たされて最終的に断るなら最初から断ってほしいという救急隊からの意見も認識。いま何を変えるべきなのかは明確だ。「今年1年で私という人間のことはわかってくれたと思います。当院の救急を向上させるためには、あらゆる疾患を診ていけるように守備範囲を広げていきたいと思っています」。
救急車搬送口。心肺停止の救急搬送をはじめ、断らない救急を目指している
八尾市立病院の救急処置室。馬場先生の赴任以来、頭部や胸部外傷を含めて救急の受け入れ件数が大幅に増加。同院の救急体制が大きく変わりつつある