八尾市立病院 榊原 充 消化器内科部長・地域医療連携室室長補佐

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消化器疾患全般への
内視鏡治療とともに、
肝臓がんの専門治療を追求
公立病院の使命として、《高度医療》と《地域医療連携》を柱にした病院運営に努めている八尾市立病院。一昨年に大阪国際がんセンターから赴任してきた榊原先生に、消化器内科における高度医療と地域医療連携の取組みをうかがった。
八尾市立病院
榊原 充 消化器内科部長・地域医療連携室室長補佐
高度医療への挑戦
ラジオ波焼灼療法による
肝臓がん治療の実績増加
2015年に国から地域がん診療連携拠点病院の指定を受け、専門性の高いがん診療にも力を入れている八尾市立病院。消化器内科でもここ数年で、ラジオ波焼灼療法による肝臓がん治療の症例数を上げつつある。この実績に貢献しているのが、2018年より消化器内科部長に就任した榊原先生。先生は高い専門性が必要となる肝胆膵の領域を専門とするドクターであり、前職場である大阪国際がんセンター時代に、メーカーと共にラジオ波焼灼療法機器の改良に取組んだ逸話を持つ。「7年ほど前の話ですよ。ラジオ波焼灼療法とは、皮膚から刺した針からの熱でがん細胞を壊死させる治療法なのですが、従来は針1本での治療が基本でした。しかしそれでは腫瘍を直接刺す必要があり、針穴からがん細胞が転移する危険性が。そこで、腫瘍を外から挟むような形で熱を加えられる、複数本の針を同時に扱うラジオ波焼灼療法機器を用いてより簡単安全に治療できないかと考えたのです」と榊原先生。実は先生が描いた設計図をもとに試作品を作ったのは八尾の町工場。不思議と八尾と縁のある榊原先生なのだ。数年にわたる検証・臨床試験を経て完成した新型ラジオ波焼灼療法機器は、この春に八尾市立病院にも導入予定。先生のもとで、さらに積極的に肝臓がんの治療に用いられることが期待されている。「複数本穿刺法では従来より大きい病変まで治療が可能に。従来は3センチを超えるとラジオ波での治療は難しかったのですが、4センチぐらいまでは対応可能となるでしょう。またラジオ波は針を刺すだけの体への負担が少ない治療法。高齢者のような外科手術が厳しい患者さんへの治療法としても非常に有効です」。と榊原先生は展望を語ってくれた。肝臓がんを患う方にとってとても心強い話だ。
内視鏡センターでは検査画像を医師や患者が瞬時に確認できるシステムを導入
大阪国際がんセンターでの7年のキャリアを同院の治療に活かす榊原先生
早期がんへの対応
胃がん・大腸がんへの
内視鏡治療で地域に貢献
各種機器を導入した内視鏡センターを設置し、ほとんど全ての消化器疾患の患者に対して、内視鏡を使用しての検査・治療を提供している八尾市立病院。消化器内科ではこの環境を活用し、早期食道がん・早期胃がん・早期大腸がんに対する内視鏡的治療に注力している。内視鏡で粘膜を剥離するESDと呼ばれる手法など、大きな手術に頼らないがん治療にも対応。検診で不安が発見されたなら、同院での精密検査を利用すると万が一の際に治療の選択肢が広がるだろう。また内視鏡センターでは、逆行性胆管膵管造影や超音波内視鏡検査という、胆嚢がんや膵臓がんに対する検査治療法にも対応。胆管が狭くなってしまっている患者にステントというチューブを挿入して黄疸を取るなど、内視鏡を用いた繊細な治療に取組んでいる。「こういった手法は今後さらに積極的に行いたいと考えているところです。消化器の中でも胆膵は治療に特殊な技術が必要な領域であり、さらに注力していきたいです。また、肝臓がんに関しては、大阪国際がんセンターとほぼ同じクオリティの診療を八尾市立病院でやっていこうというのを目標に掲げています」と榊原先生は意欲を見せる。今後の展開がますます期待できそうだ。
先生が描いたラジオ波焼灼療法機器の3Dイメージ
内科外来スタッフとの集合写真。消化器内科の枠にとらわれず、他科との連携を重視したチーム医療を行っている