【対談】関西医科大学附属病院 消化器肝臓内科 長沼誠主任教授 × 地域医療連携部 木下秀文部長

ドクター 対談

急増する難病患者を支える消化器肝臓内科

消化器がん、潰瘍性大腸炎、クローン病…。地域で増加傾向にある疾患に対して高度医療の提供や医療連携の推進で迎え撃つ関西医科大学附属病院。不安を抱える患者の生活をいかにして支えているのかを探るため、同院に取材した。

地域医療の中核を担う病院として基本的な疾患から難病まで対応

大腸がんや潰瘍性大腸炎などの些細な病変まで発見するAI診断。経験が浅い医師でも質の高い診断が可能になった

それぞれの役割

長沼
消化器肝臓内科では消化管(食道・胃・十二指腸・小腸・大腸)、肝臓、胆のう、膵臓と幅広い臓器を担当しています。当院の特徴は大学病院として高度で専門的な診療、難病患者さんへの診療をする一方で、胃潰瘍や胆石症など基本的な疾患にも取組んでいる点です。
木下
地域医療連携部の役割は当院で治療する患者さんをスムーズに受け入れる前方支援と、当院で治療を終えた患者さんを地域の医療機関や在宅療養につなぐ後方支援です。消化器肝臓内科は急な対応が必要な疾患が多いですが、皆で協力して積極的に受け入れてくださるので、非常に助かっています。

難病への取組み

木下
最近は潰瘍性大腸炎やクローン病の患者さんが急増していて、当院への紹介も多くなっている印象です。
長沼
腸の炎症による下痢・腹痛・血便などが持続する国指定の難病で、10~40代の若年層に多いのが特徴です。根本的な原因が不明で、確立された治療法がありません。基本的な投薬治療が効かない難治例の患者さんの受け皿として、新規治療を取り入れながら、個々に合った治療を選択しています。
木下
難病センターの潰瘍性大腸炎・クローン病部門は土曜日の外来にも対応しています。通学や就労で平日に通院できない患者さんも通いやすいのが特徴です。
長沼
新薬の開発で入院や手術に至る例は少なくなってきました。これからも、患者さんの生活が充実するような診察を心がけます。

木下秀文部長/腎泌尿外科の主任教授で、腹腔鏡手術やロボット手術によるがん治療が専門。地域医療連携部の部長として、患者の紹介・逆紹介や治療後のサポートを円滑にするため、院内・院外へ情報発信を行う
長沼誠主任教授/潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患が専門。日常的な疾患から高度な治療が必要な難病まで幅広く対応するだけではなく、新しい検査や治療の開発のため、臨床研究や基礎研究にも取組んでいる

AI診断で早期発見

木下
消化器がんは、がんの罹患率・死亡率でも上位を占めています。どのような診療をしていますか?
長沼
がんの早期発見や見落とし軽減のため、2022年11月から内視鏡に搭載されたAIが病変部を感知してアラームで知らせてくれるAI診断を導入しました。治療に関しては、特に胃がん、大腸がん、食道がんは負担の少ない内視鏡治療ができる例が多く、短期間の入院で済むことも増えました。進行がんに対しては外科と連携して化学療法や手術を行います。抗がん剤治療も進化していて、従来なら手術できなかった患者さんの手術も可能になりました。当院での治療後は、自宅療養、療養型病院への転院、介護施設への入居などのパターンがありますが、地域医療連携部が円滑に進めてくださるので、非常に感謝しています。

地域連携の中核を担う

長沼
周辺に病院が少ない地域の特性に沿った病院として、専門医療を発展させることと同様に、一般的な疾患への治療にも注力することが大切だと思っています。さらに大学病院として、難病の基礎研究、新たな検査や治療の開発にも注力します。その結果を地域の皆様に還元していきたいですね。
木下
当院のモットー「断らない病院」の実践で、患者さんと地域の医療機関から信頼を得ることが重要です。他の医療施設と役割分担し、連携する。つまり地域全体で一つの病院となるイメージで、患者さんが当院に来て、地域での生活に帰っていく導線をスムーズにします。当院はその中核的役割を担っていきます。
大腸がんや潰瘍性大腸炎などの些細な病変まで発見するAI診断。経験が浅い医師でも質の高い診断が可能になった

関西医科大学は、京阪沿線に当院を含む6つの附属医療機関を展開。それぞれが連携することで、沿線住民の健康と福祉向上に貢献する医療を提供しています  

hospital data

関西医科大学附属病院
TEL:072‐804‐0101
枚方市新町2‐3‐1 


ホームページ

関連記事一覧