化学療法センター
近年がん薬物療法は目覚ましい発達をする一方で、治療が複雑化している。患者さんがより安全に治療を受けられるように、関西医科大学香里病院では令和6年4月に化学療法センターを開設した。
複数の診療科と多職種が連携し
安全な化学療法を提供
センター化の意義
化学療法センターが開設したことで、以前と比べてどう変化があったのだろうか。杉江センター長に詳細をうかがった。「これまでは各診療科の担当医がそれぞれ化学療法を行っていましたが、治療が複雑化したことで、診療科横断的な診療が必要となってきました。当センターでは診療科の壁をなくし、多職種でチームを組んで治療にあたることで、より安全な治療を提供できるようになりました」。

リクライニングチェア8台、ベッド2台の10床の設備がある化学療法センター。医師・看護師・薬剤師などが連携して治療にあたる
がん薬物療法の現在
これまでがん薬物療法は、主にがんの進行を抑えたり、症状を和らげる目的で行われてきた。しかし、がん細胞が免疫細胞の攻撃を逃れる仕組みに着目した「免疫チェックポイント阻害薬」や、がん細胞に抗がん薬をピンポイントに届ける「抗体薬物複合体」といった新しい薬が開発されたことで、これまで治療に難渋していた進行がんに対しても効果を示すようになり、薬物療法の重要性は高まった。同センターでは乳がんの幅広い症例で薬物療法を導入しており、杉江センター長は治療について詳細を語ってくれた。「乳がんに対する薬物治療は、手術前と手術後で役割
が異なります。手術前に行う治療はがんを小さくして、乳房の温存を目指す目的があります。最近の研究では、ホルモン療法などが効きにくいトリプルネガティブ乳がんなどに対して術前に化学療法を行うことで、予後を良好にできるということもわかってきており、積極的に導入しています。一方、手術後に行う治療は、がん再発を防止する目的で行われます。がんの転移があった場合にも薬物療法が行われ、延命とともに症状を和らげる役割を担います。薬の種類が増えたことで副作用も多様化しましたが、当センターでは副作用のために治療を中止することがないよう、チームで対策を行い、安全な治療の提供に尽力しています」。
副作用への対処
抗がん剤治療には、肌や爪が荒れる、脱毛が発生するといった外見的な影響や、免疫力が低下して感染症にかかりやすくなるなどの副作用が存在する。そこで同センターでは、様々な対策を講じている。「感染症対策としては、治療前に肺炎球菌ワクチンやインフルエンザワクチン、帯状疱疹ワクチンなどの接種を行うことで予防に努めています。外見的な問題に関しては、化粧品メーカーなどと協力し、患者さんからご相談いただいた際に、ネイルケアやウィッグの手配ができるように調整を進めており、今後アピアランスケアをより一層充実させたいと考えています」。

がん薬物療法が進化し、多剤併用による治療が増えたことで、点滴時間も増加傾向に。同センターは電動リクライニングチェアを導入し、負担の軽減を図っている

杉江センター長は、日本乳癌学会と日本外科学会の指導医でもあり、乳がん手術にも対応。がん薬物療法と並行して治療を行うことで、多くの患者さんを救っている
