関西医科大学総合医療センター

[テーマ]
子どもの心身症や発達障害を心身両面からサポート
地域リソースとのさらなる連携強化を目指して
コロナ禍で急激に変化した子どもたちの生活環境
新型コロナウイルス感染症に伴う社会の変化により、大きく変わってきている子どもたちの生活環境。マスクでの生活といった新しい生活様式や突然の休校、行事の中止など急激な変化に適応できず、心身に影響が出ている子どもたちが多いという。「コロナ禍を経て、就寝時間が乱れる子どもたちが増えています。スマホやテレビの画面を見ているスクリーンタイムが増加することで就寝時間がずれ込み、日中に眠くなったり、朝起きられずに登校できない子もいます。影響は食生活にも。ステイホームにより運動量が減少することで食事量が減ったり、不安からくる食欲不振なども問題になっています」とコロナ禍における子どもたちの健康状態に警鐘を鳴らすのは、小児科の石崎診療部長だ。あらゆる悩みを抱える乳幼児期から思春期の子どもたちに対して、関西医科大学総合医療センターでは他職種が協働し総合的に支援する体制を構築。医師や看護師、心理士、院内学級の教員と連携することで、医療と教育の双方からのサポートを実現している。

サボりや怠けと誤解されがちな起立性調節障害を、正しく診断するためのチルトテーブルを導入している
入院中の学習を保証する病棟併設の院内学級
起立性調節障害や過敏性腸症候群、不登校といった心身症を抱える子どもたちを積極的に受け入れている同院。治療のために2週間以上の長期入院が必要になる場合は、病棟内に併設している院内学級(大阪府立刀根山支援学校総合医療センター分教室)を利用することで、学校に行っていない期間でも学習時間を確保している。「院内学級には国語、算数、外国語、音楽、美術、体育といった通常の学校と同様の科目を設けています。少人数制にはなりますが、院内の他の子どもたちと集団生活を送りながら、勉学に励むことができる教室です。また退院の際には、地元校と連携し復帰しやすい環境づくりにも取組んでいます」。他にも病を抱える子どもたちへの理解を深めてもらうため、小2022年に第16回目を迎えた。「開催当初は教員の方々に当院の南館臨床講堂に集まっていただき、医師との意見交換などを交えながら行っていました。しかし新型コロナウイルス感染拡大を受け、オンラインセミナーに移行。今では全国各地からご視聴いただいています」。

少人数の強みを活かして、子ども一人ひとりの特性に合わせた授業を行う院内学級。地元校と密に連携を取り、退院後に復帰しやすい環境づくりにも取組む
発達障害への理解を深め共生社会の実現を目指す
同院の小児科では、子どもたちのプライマリ"発達〟です。成長の過程で生じる不調を心と身体の両面から評価し、一人ひとりに合わせた支援体制を整えます。ただ子どもたちが抱える問題を1~2週間といった短期間で改善することは難しく、
しっかりと腰を据えて長期的な目で治療方針を立てることが大切。長期的に診ていくことで症状が落ち着くことが多いですが、中には問題を抱えたまま成人期を迎えることも。そういった場合には、当院の精神科の先生や附属病院の心療内科の先生と連携し、精神的な問題も含めて総合的に支援させていただきます」。さらに今後は、発達障害の子どもたちの支援を強化していきたいと話す石崎先生。「医師や院内学級の先生、学校の先生といった地域リソースとの連携をより一層強化し、それぞれの立場から病気や行動に関する情報交換を積極的に行っていくことが重要だと考えています。発達障害の子どもたちがあらゆる社会生活の中で適用しやすくなるように、多面的な理解を深めていきたいです」と共生社会の実現に向けた想いとともに締めくくった。
専門医療にできること!

