担当医
成子 隆彦 理事長特命教授
関西医科大学総合医療センター心臓血管病センター・センター長/関西医科大学卒/日本内科学会認定医、日本循環器学会専門医、日本心血管インターベンション治療学会専門医、日本心臓血管内視鏡学会認定医/循環器疾患全般を専門領域とする
[テーマ]
先端的な心血管治療を身近に提供
心血管診療の拠点として高度専門医療を提供
専門的かつ高度な心血管診療に対応する拠点として、心臓血管病センターと不整脈治療センターの二つの柱を持つ関西医科大学総合医療センター。心臓血管病センターでは、冠動脈高度石灰化病変に対する特殊デバイスを用いたカテーテル治療や、微小血管狭心症の診断を可能にする最新システムの導入など、最前線の医療提供に積極的に取組んでいる。不整脈治療センターにおいては、従来のカテーテルアブレーション治療に加え、合併症の発生リスクの低減を期待できる次世代の治療法「パルスフィールドアブレーション」を導入。両センターは内科医と外科医がシームレスに連携する「ハートチーム」という一つの専門家組織を結成し、患者の状態に合わせて最適な治療法を柔軟に選択できる体制を整えている。

短い周期で電場をつくり、標的となる心筋細胞にのみ作用する「パルスフィールドアブレーション」は、熱が発生しないため合併症のリスクを低減する
隠れ狭心症を診断できる新たなシステムを導入
近年注目しているというのが、従来の検査では発見が難しかった微小血管狭心症の診断法だ。ほかの狭心症に比べ比較的新しい病態として知られており、これまで不明な点も多かったという。「微小血管狭心症は、心臓を栄養する血管である冠動脈に動脈硬化が生じ、内腔が狭くなって血流が不足することで起こる通常の狭心症とは異なります。微小血管狭
心症は、直径100μm以下(髪の毛の太さとほぼ同じ)の微小な冠動脈において、血管の拡張不全や収縮亢進が生じ、一時的に心筋虚血を引き起こします。その結果、労作とは無関係に、安静時にも胸部圧迫感が現れる狭心症とされています。そのため冠動脈造影検査では狭心症という診断がつかず、患者さんが『胸の痛み』を訴えられる場合でも『問題なし』と判断されることが大半でした。こうした状況を受け、診断法の開発が進められ、微小血管狭心症を診断できるソフトが誕生しました。当院では2022年よりこの診断システムを導入しており、これまで『問題なし』とされていた患者さんが微小血管狭心症と診断され、適切な治療を受けることで症状緩和につながったというケースもあります」。「隠れ狭心症」が明確になり、治療へとつなげることができるようになったのは大きな進歩だ。

地域の医療機関だけでなく、一般向けの市民健康講座でも最先端の医療情報を積極的に紹介している
地域医療の充実を目指し先端的な医療を積極的に共有
超高齢社会の到来に伴い、増加している高齢者の心不全や複数の慢性疾患を抱える多疾患併存患者。「心不全とは特定の疾患名を指しているのではなく、心筋梗塞、狭心症、心臓弁膜症、不整脈など様々な原因疾患によって引き起こされる心臓機能の低下を表すものです。年齢とともに心臓機能は低下するため、高齢になるほど心不全
を起こしやすくなります。当院では心不全の患者さんを積極的に受け入れ、その原因疾患をしっかりと見極めた上で適切な治療を行い、再発防止へとつなげています」。多疾患併存の患者に対しては、外科や腎臓内科など診療科を跨いだ横断的かつ包括的な治療を推進。複数の診療科を持つ総合病院だからこそ、患者一人ひとりの状況を踏まえた総合的な治療が可能となっている。また、今後さらに進行していく高齢化に地域全体で取組んでいくため、周辺の医療機関への情報提供および、連携強化にも尽力。年に3~4回程度、成子教授が主導し同院の「ハートチーム」での取組み内容を報告する「ハートレター」を周辺の医療機関へ配布するなど、先端医療を広く提供することで、地域医療のさらなる発展に貢献していく。
専門医療にできること!
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