社会福祉法人 恩賜財団 大阪府済生会野江病院

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テーマ

脳卒中に対して包括的な医療と支援を提供

日進月歩で発展
脳梗塞を改善する
カテーテル治療

脳神経外科の体制を強化
専門医の就任と機器の刷新

 脳の血管が詰まる脳梗塞、血管が破裂する脳出血、脳内にできたコブが破裂するクモ膜下出血の3つを指す脳卒中は寝たきりの原因の第一位だ。地域に根ざした高度な医療を提供している野江病院は、高齢化に伴い増加傾向の脳卒中に対応するため、医療体制の強化に乗り出した。昨年4月、脳神経外科に日本脳血管内治療指導医である別府先生が就任したこともその一環で、同院では脳卒中の約80%を占める脳梗塞における画期的な治療法のカテーテル治療が可能になった。「これまでは脳梗塞を発症すると手の施しようがありませんでした。現在はカテーテルで血管の詰まりを解消することで、後遺症がなく社会復帰される例もあります。10年前では考えられないくらい、根本的に治療が変わりました」と別府先生。さらに、同院は今年の8月からカテーテル治療に必要な脳血管撮影装置の最新機種を導入する。従来に比べて被ばく量が75%も軽減し、術部を映す画像が高精細になるという。脳梗塞治療はより安全で高精度に、患者の負担が少なくなる予定だ。
カテーテル治療に用いる道具の進化で適用の症例が広がっており、より多くの患者に負担の少ない治療ができるようになった

多職種連携で脳卒中治療を
トータルコーディネート

 脳卒中は一刻を争う緊急対応と高度な診断、治療が要求される。また、手術後の後遺症や寝たきりへのサポート、社会復帰を目指したリハビリや療養など、治療だけで完結する疾患ではない。1人の患者に対してさまざまな医療スタッフが介入する必要があるため、同院は脳神経外科、脳神経内科、救急集中治療科で脳卒中センターを構成。医師、専門の看護師、専任のリハビリスタッフ、薬剤師やコメディカルが連携し、チーム医療で患者を支えている。「たとえば脳梗塞の治療ではカテーテルの前にt‐PA療法という血管の詰まりを溶かす薬による内科的な治療を検討します。脳神経疾患は複雑なので、患者さんを外科的な視点と内科的な視点の両方で評価し、最適な治療を考えられる点は強みでしょう。また、患者さんには治療後も生活があります。家族の状況や社会的な背景を考慮しながら、回復期病院への転院や施設への入居、在宅療養への移行などを選択する必要があるんです。治療と同様に重要ですが、医師だけでは判断が難しい部分をコメディカルの方が調整してくださるのでとても助かっています」。同院は、脳卒中患者の受け入れから退院後のサポート、予防や再発防止までトータルコーディネートできる体制を整えている。

医師、看護師、臨床工学技士、診療放射線技師など多職種で結成されたカテーテルチーム。各職種が専門性を発揮しながら連携し、患者に寄り添った医療を提供している

診療や情報発信の場で
脳卒中の知識を広める

 脳卒中は発症からどれだけ早く治療を開始できるかが非常に重要だ。実際に前述のt‐PA療法の適用は発症後4.5時間以内、カテーテル治療は24時間以内という時間制限がある。脳卒中の疑いがあればすぐに救急車を呼ぶことが大切だが、それを伝えるFASTという標語をご存知だろうか。別府先生は「Fはフェイス、顔の麻痺で顔に歪みが出たり口
からこぼしたりすること。Aはアーム、手足が痺れたり力が入らなかったりすること。Sはスピーチ、言葉が出てこなかったり呂律が回らなかったりすること。これらの1つでも症状がある場合、脳卒中の可能性は70%以上です。Tはタイムで、早く電話しようという思いが込められています」と説明してくれた。発症時の対処はFASTだが、そもそも脳卒中を起こさないことが重要なため、同院では予防にも注力している。「高血圧、糖尿病、脂質異常などの生活習慣病が脳卒中の危険因子なので、改善いただけるようリスクを伝えています」。こうした情報は本人や家族が知っていることで、いざという時に命を守る正しい判断ができるようになる。同院は市民講座やセミナーを開くだけではなく、SNSやYoutubeを駆使した情報発信で、地域住民の啓蒙に取組んでいる。

自作の資料や治療に使う道具を実際に見せながら疾患や治療の説明する別府先生。「患者さんやご家族が理解して初めて治療が始まると思っています」

専門医療にできること

担当医

別府 幹也 先生

奈良県立医科大学卒/日本脳神経外科学会指導医、日本脳神経血管内治療学会指導医、日本脳卒中学会指導医、日本脳卒中の外科学会技術認定医、日本神経内視鏡学会技術認定医/専門は脳卒中のカテーテル治療。患者の負担が少なく、症状を劇的に改善できる可能性を秘めているカテーテルに魅力を感じ、いち早く始めた。座右の銘は「負けに不思議の負けなし」

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社会福祉法人 恩賜財団 大阪府済生会野江病院
TEL:06-6932-0401
大阪市城東区古市1-3-25


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