地方独立行政法人 市立東大阪医療センター
新しく赴任する医師と従来スタッフを融合させ対話のある診療室を目指す
悪性腫瘍に対応する婦人科と周産期センターを有する産婦人科が特徴の市立東大阪医療センター。2024年1月に大阪大学から赴任してきた木村部長に、新体制となる同センターの産婦人科についてうかがった。
刷新される産婦人科
産婦人科のドクターが大阪大学からの派遣に変更
令和5年1月から産婦人科外来初診の診療が紹介予約制となった市立東大阪医療センター。地域医療機関との連携強化と機能分化をはかりながら、良質な医療を効率的に提供していくことを目指す同センターでは、令和6年4月に産婦人科のドクターが大阪大学からの派遣という形で全面的に変更される。そのような変換期にあって、産婦人科の部長として1月から赴任してきた木村部長は、新体制を左右するキーマンとなる。「ドクターの数という点では大きな差はありませんが、人員が刷新されるということ、少子化が進む世の中のニーズをふまえながら、従来までの医療の維持と新体制だから提供できる診療の新しい形を築いていけたらと考えています」。チーム医療とボーダーライン領域に対応する特殊外来の充実を基本理念とする同センターの産婦人科は、一般病床53床と周産期エリア(陣痛室、新生児室、分娩室)で構成。婦人科では、院内に放射線治療室を有することから、婦人科悪性腫瘍に対する集学的治療を積極的に実施。東大阪地区で唯一のOGCS(産婦人科診療相互援助システム)加盟施設であり、院内にNICUがある産科では、地域の周産期医療の拠点としての役割を担っている。「婦人科の内視鏡手術に関しては、専門医が3名構成されますので、ある程度地域ニーズに応えられるのではないかと考えています。また、総合病院としては手術だけでなく、あらゆる疾患に対応できる体制の構築が不可欠。合併症を持つ方を全て当センターで診療できる訳ではありませんが、可能な限り複数の医師で対応できる体制を構築し、24時間365日対応していけたらと思います」。大阪大学から新たに派遣される医師と、看護師や助産師など従来スタッフとの融合をはかり、より良い体制構築が求められている。
産婦人科医療の現状
少子化と高齢出産によって変化する産婦人科医療
「少子化が進む現在にあって、分娩数自体は減少傾向にありますが、高齢出産の増加などにより、ひとつの分娩に関わる人員や時間が変わってきています。通常の妊婦検診に加えて、高齢の方に対しては出生前診断などが必要になってきますし、超音波の進歩によって見つかる症状への対応なども必要になります。マンパワーの問題はありますが、そのような地域ニーズに可能な限り対応していかなければなりません」と話す木村部長。産科や婦人科など幅広い分野でキャリアを築いてきたご自身の経験を活かし、専門性の高い医師や医療スタッフ間の橋渡し役として力を発揮する。「私自身は、ひとつに特化することなく幅広い分野を経験してきました。それぞれの立場の気持ちが分かりますので、ここに集まる医師や医療スタッフが働きやすい環境を作っていけたらと思います。また、患者さんに対しては、疑問や不安なことがあれば、医師に気軽に質問ができる状況にしてあげられたらと思っています」。木村部長が目指す医療従事者も患者さんも対話ができる診察室の実現。産科も婦人科も悪性疾患や良性疾患であっても変わりなく、円滑なコミュニケーションを基本とした診療の形が築き上げられていくに違いない。
今後の目標と可能性
母体死亡ゼロを目指し新たな可能性を模索
「当医療センターには、中河内救命救急センターが隣接しています。産婦人科の周産期センターと高度救命センターが連携して産科の救命救急に対応する施設は大阪府下で10施設あります。当医療センターがその役割を担う必要があるかは地域ニーズにもよりますが、母体死亡ゼロを目指すという方針からすると、今後は重症妊産婦の対応施設としての可能性も考えています」。大阪市内への搬送と比べて15分ほどの差かもしれないが、重症時の時間短縮は救命という観点からは大きな利点。それらの構想も含めて、木村部長を中心に新体制となる産婦人科の今後の可能性に期待したい。