【対談】社会福祉法人 恩賜財団 大阪府済生会野江病院 泌尿器科 河 源特任部長× 消化器外科 伊藤 鉄夫診療部長
フレキシブルに動かせるアームと
高精度なカメラで安全な手術を実現
大阪府済生会野江病院では予てから低侵襲手術に重点を置いており、昨年12月にダヴィンチXiを導入した。ダヴィンチの執刀医である河先生と伊藤先生に、導入の経緯や具体的なメリットをうかがった。
精密かつ身体的負担の少ない
ダヴィンチ手術の導入
ロボット手術支援装置「ダヴィンチXi」。消化器外科や泌尿器科などの骨盤内手術において精密で負担の少ない手術が行え、早期の社会復帰が望める
ダヴィンチ導入の経緯
伊藤
私が野江病院に赴任したのは6年前になるのですが、前に在籍した病院ではダヴィンチ手術に関わっておりまして、導入することによる患者さんへのメリットを強く感じていました。そこで当科の太田部長とともに導入の必要性を訴え続け、ようやく導入する運びとなりました。
河
私は2012年に当院に赴任したのですが、ちょうどその年に前立腺がんに対するロボット手術が保険適用になり、その頃から泌尿器科でも話題にのぼるようになっていました。当初は導入例はごく僅かでしたが、今では患者さんからロボット手術を希望する声が上がるほど普及してきたので、導入できて嬉しく感じております。
ダヴィンチ手術の特徴
伊藤
当院では早くから腹腔鏡手術を導入していましたが、腹腔鏡の鉗子は動作に制限が大きく、場所によって手術が困難なケースがありました。ダヴィンチ手術は自在に曲がるロボットアームを医師が操作する手術であり、これまで困難だった箇所の手術が行いやすくなります。傷口の小ささは腹腔鏡と変わりませんが、ロボットなので手ぶれがなく、精度の高いカメラを用いるので、これまでより安全に手術ができると思います。
河
ダヴィンチを扱える医師は当院ではまだ少ないですが、興味を持っている若手医師は多く、ロボットの操作であれば経験の少ない医師でもより安全に手術を行うことができるため、積極的に教育をしていければと考えています。
適用される手術について
伊藤
ダヴィンチを導入してから日が浅いため今後症例を増やしていくことになるのですが、消化器外科では直腸がん・結腸がんから手術を開始しました。次に胃がんや鼠径ヘルニアの手術に拡大していければと考えています。特に当院では鼠径ヘルニアの手術件数が2022年で185件あり、ダヴィンチ手術を希望される患者さんも多くおられると思いますので、できるだけ早く準備ができればと考えています。
河
泌尿器科では前立腺がんから手術を開始しています。次のステップとして腎がんへの適用を考えておりますが、定められている症例数や術者の経験数をクリアする必要があり、安全性に配慮しつつ今年度に開始できるよう努めています。
早期発見のすすめ
伊藤
ある程度進行したがんであっても、化学療法や手術などの組み合わせで治療は可能になってきましたが、やはり早期発見が大事です。大腸がんであれば便潜血検査や大腸カメラで早期発見が可能ですので、症状がなくても検査を受けていただければと思います。
河
前立腺がんは、発見された時には進行しているというケースも珍しくありません。しかし、前立腺がんにはPSA検査という強力な診断ツールがあり、血液検査で簡単に診断ができます。当院では月~金曜の午前診に予約不要で大阪市前立腺がん検診でのPSA検査ができますので、ぜひご検討ください。(対象:50・55・60・65・70歳になられた方)